研究構造マップ
中心的な問い
AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などの発展によって、UI/UX 設計で考えるべき対象が画面上の操作性だけでなく、AI への指示、権限、確認、実行過程の見え方、結果の妥当性、既存アプリとの関係などへ広がりつつあるのではないか。この変化を研究で扱うにあたり、AI 自体の変化が速すぎるため、AI をどのような判断軸で扱えばよいのかが見えにくい。そこで、人間と AI の間に不変的に現れる概念・構造を探ることで、AI 時代の UI/UX 設計を考えるための観察上の足場をつくれるか。
思考のスレッド
- 認知負荷の移行(実行負荷 → 言語化負荷)— 繰り返し立ち戻るテーマ。言語化が必要になる範囲がどこまで広がるか(行為の設定 → 意図 → 目標)という方向に膨らんでいる
- ノーマンの7段階モデルの再解釈 — 活発に考えている。モデルの構造自体は不変で、インスタンスが変わるのでは、という見立てが生まれている。ペースレイヤリング(スチュアート・ブランド)の「深い層は変わらない」という枠組みとも接続しそうだと気づいた(2026-03-31)
- メンタルモデルのギャップの性質変化 — 何度も戻ってくるスレッド。「縮まる」のではなく「性質が変わる」という方向で考えているが、まだ揺れている
- 期待の人間化 — AIの擬人化に伴ってユーザーの期待が変質していくのでは、という着想。ギャップの話と繋がりそう
- 言語化支援のデザイン — 操作補助から言語化補助への転換。既存のUIパターン(ChatGPT・Genspark等)との接続を考え始めている
- 委譲条件 — 活発に考えている。AI に任せるために必要な目的・文脈・制約・参照資産・優先順位・評価基準・委譲範囲・修復手段をどう整理するか、という方向に焦点が移ってきている
- 行動契約 — AIへの委譲の範囲・粒度の設計。委譲条件の一部として再接続されつつある
- 人間側に残る設計行為 — 新しく強く出てきたスレッド。AI が画面・スライド・実装などの実行を担うとき、人間側には判断基準の形成、暗黙知の外部化、出力の評価、方向づけ、ブランドの意思の保持が残るのではないか
- 作る側の組織知の外部化 — インターン環境と接続している。デザインシステム、README、skill、サンプル、レビュー観点などは、AI に委譲するための媒介物として捉えられそう
- 研究の語り口・意義の具体化 — 新しく強く出てきたスレッド。「ズレ」「委譲条件」「任せるための設計」のような圧縮語が先に立つと、AI を扱う状況で何を見て何を考慮するかを多角的に整理するニュアンスが落ちるのではないか、という違和感が出ている
- 設計者目線からの研究起点の再定位 — 新しく強く出てきたスレッド。研究の出発点は、AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などによって UI/UX 設計で考えるべき対象が画面上の操作性を超えて広がりつつあるのではないか、という設計者目線の問題意識にありそう。この変化を研究で扱おうとすると、AI 自体の変化が速すぎて、AI をどのような判断軸で扱えばよいのかが見えにくくなる。そのため、AI と人間の間にある不変的な概念・構造を探る必要が出てきた、という順序で捉え直す必要がありそう
- 背景と研究主題の分離 — 新しく強く出てきたスレッド。README、skill、Claude Design、デザインシステムなどの具体例は研究の中心対象ではなく、AI が制作・開発・サービス利用に入り込んできている背景や現状として扱うべきかもしれない
- 意義の概念的貢献化 — 新しく強く出てきたスレッド。デザイナー、PM、組織などへの役割別メリットを意義の本体として並べると、研究が個別解を出すものに見えてしまう。主たる意義は、AI 介在型の実践を認知・相互作用・デザイン実践・組織的知識の関係の再配置として記述する概念的な足場をつくることに置いた方がよさそう
- 広い背景から実行可能な研究方針への接続 — 新しく強く出てきたスレッド。背景・問題設定・意義を広く置いたうえで、実際にこの研究で扱う断面、題材、分析単位、リサーチ方法を決める必要が出ている
- 変化の速い AI を研究対象化する方法 — 新しく強く出てきたが、位置づけを調整しているスレッド。AI の最新機能や特定ツールを避けるという話ではなく、AI の変化が速いなかで、具体的な事例や機能をどの観点から読み解けばよいのかという判断軸を探す必要が見えてきている。その判断軸の候補として、人間と AI の間に不変的に現れる概念・構造を探る方向が出てきている
- 上位方針と具体アプローチの分離 — 新しく強く出てきたが、再配置が必要なスレッド。以前は「変化の速い AI をどう研究として扱うか」を上位方針として置いていたが、現在は「AI によって UI/UX 設計で考える対象がどう変わるのか」を上位の問題意識に置き、その変化を扱うための具体アプローチとして、不変的な概念・構造や観察軸を探る方向へ修正されつつある
- クリティカル・インシデントを通じた観察 — 新しく強く出てきたスレッド。AI 介在型実践を均等に見るのではなく、判断・評価・違和感・修復が露出する出来事を記録する方法として考えている。さらに、AI を使ってアウトプットを生み出す場面と、人間のみでアウトプットを生み出す場面の双方から重大な出来事を集め、共通する上位概念と AI によって表れ方が変わる部分を比較する方向が出てきている
- 題材・対象者・文脈管理 — 新しく強く出てきたスレッド。AI サービス名ではなく文章整理、スライド生成、UI 生成、コード支援のような目的・実践タイプで題材を選び、対象者は「AI に生成や実行を任せ、その出力を評価する実践者」として扱いつつ、立場・専門性・評価基準・組織的文脈を各インシデントの条件として記録する必要がありそう
- 先行研究との接続による研究設計の締め直し — 新しく強く出てきたスレッド。Park et al. の生成 AI 評価方法論、Shi et al. の Human-GenAI Interaction taxonomy、Terry et al. の interactive alignment などを見ると、「観察軸を探る」という上位表現だけでは既存研究とかなり重なる。既存枠組みを避けるのではなく、それらを感度概念として使い、実践中の判断・違和感・修復・媒介物更新のインシデントをどう記述できるかに焦点を移す必要が出ている
- AIあり/なし実践の上位概念比較 — 新しく強く出てきたスレッド。AIありとAIなしを効果測定や前後比較として比べるのではなく、目的形成、評価基準、修正判断、責任、成果物への納得などの上位概念で比較する。両者に共通して現れる概念を「不変的構造の候補」として扱い、AI利用時にはそれがどのように外部化・再配置・変形されるのかを見る補助線になりそう
仮説の苗床
- ノーマンの7段階モデルは本質的には変わらないのかもしれない。変化するのは各ステップの担い手と表出形式であって、構造自体は不変では
- 言語化が必要な範囲は「行為の設定」にとどまらず「目標」まで広がるのでは——実行前の全段階がAIへのコンテキストとして外部に引き出されることになりそう
- メンタルモデルのギャップは縮まるというより、操作・実行レベルから意図・解釈レベルへと性質が変わっていくのかもしれない
- AIが人間らしくふるまうほどユーザーは人間的な期待を投影し、ギャップが高度化するのでは(期待の人間化)
- 言語化支援はすでにUIパターンとして実装され始めているように見える(プロアクティブ提案・サジェスト・目的別ショートカット)。もっと事例を集めて確認したい
- 「作る側」と「使う側」がそれぞれ別の語彙で同じ深い層を見ているのかもしれない——IA実践の立場(暗黙知の言語化・情報設計の原理原則)と自分の立場(認知・メンタルモデル)が対になっている可能性がある
- 暗黙知の言語化(設計の再現性)と認知プロセスの言語化(AIへの実行委任)は、異なるレイヤーで同じ動きが起きているのでは
- メンタルモデルの「人間化」は完全な対人モデルではなく、「人間っぽいが統計的で非決定的な相手」というハイブリッドなモデルになるのかもしれない——まだよくわからない
- AI が実行を担う場面では、負荷は単純に減るのではなく、操作負荷から 委譲条件を整える負荷 へ移動するのではないか
- 言語化とはプロンプト文を書くことだけではなく、UI の目的カテゴリ、README、skill、デザインシステム、サンプル、チェックリスト、承認 UI などを通じて、AI が実行に使える形で情報を外部化することなのでは
- AI によるデザイン支援の失敗は、モデル品質だけでなく、参照・優先順位・解釈・適用・評価・委譲範囲・修復ループのズレとして分解できるのでは
- AI が制作や実装の実行を担うほど、人間側の役割は「手を動かして作ること」だけから、「何を良いとするかを定義し、その判断基準を AI が扱える形に外部化し、出力を評価して方向づけること」へ重心を移していくのでは
- デザイナーの暗黙知や審美眼は AI 時代に不要になるのではなく、AI の生成物を評価し、ブランドの一貫性を保ち、組織のデザイン判断を媒介物として整備するために重要になるのでは
- 研究の意義は「ズレを説明できる」ことでは足りず、具体的な人や状況に対して、何を見落とさずに済み、どのような設計・評価・導入判断がしやすくなるのかまで言う必要があるのでは
- 概念語から入るより、具体的な状況や困りごとを丁寧に見て、そこから上位概念へ引き上げる順序の方が、この研究の探索的な性格に合うのでは
- 判断・委譲・評価・修復・外部化・介入といった語彙は、研究の前提や最初からの主目的として置くより、設計者目線で UI/UX 設計対象の変化を探る中で見えてくるかもしれない観察語彙として扱う方が自然かもしれない
- 「不変的な概念・構造を探る」という方針は、AI を研究しやすくすること自体が目的というより、AI によって UI/UX 設計の対象やあり方が変わる可能性を研究で扱うための足場として生まれているのかもしれない
- 今日出てきた具体例は、そのまま研究対象にするより、AI が人間の作業・判断・サービス体験に介在してきている現状を示す背景として位置づけ直した方が、研究の射程が広く保てるのでは
- 役割別の意義は完全に不要ではないが、研究の本体ではなく含意として扱う方がよいのでは。中心は、各職能に解を出すことではなく、複数の実践にまたがる関係変化を記述可能にすることにありそう
- 実際に研究で扱う対象は、AI 全般やデザイン実践全般ではなく、AI が実行や生成を担う場面で、人間の判断・評価・暗黙知・組織的知識がどのように表に出るかという断面に絞ると、広い背景と実行可能な調査が接続しやすいのでは
- 「実践の担い手」は単なる対象者属性ではなく、変化の速い AI を研究可能にするための観察窓として捉えられるのでは。人間一般ではなく、AI に実行を任せる場面で目的・制約・評価基準を持つ主体を見ることが重要そう
- 1 つ目の「変化の速い AI を研究としてどう扱うか」は研究の絶対的な軸に近く、媒介物やワークフローはその軸を具体的に観察可能にするためのアプローチとして位置づけるとよいのでは
- クリティカル・インシデント法は、研究全体の主題ではなく、AI に実行を任せる場面で判断や暗黙知が露出する出来事を拾うための焦点化手段として使えるのでは
- 実践タイプは一つに絞り切らず、初期段階では複数タイプから 8〜12 件程度の濃いインシデントを集め、見えてきた観察軸に応じて追加していく探索的・理論的サンプリングがよさそう
- 観察軸はゼロから帰納的に発見するというより、既存の Human-GenAI Interaction taxonomy や生成 AI 評価枠組みを初期コードとして用い、その枠組みで説明できる部分と説明しにくい部分をインシデント分析から見直す方が、先行研究との接続が自然かもしれない
- 本研究の独自性は「生成 AI を研究する方法論そのもの」ではなく、制作・開発・研究・設計実践の中で判断・評価・修復・媒介物更新が露出する具体的な出来事を、既存枠組みと照らしながら記述する点に置く方が現実的かもしれない
- CIT の対象は「AIを使ったアウトプット生成場面」一般では広すぎる。アウトプットに対して違和感を持った、採用/不採用を判断した、追加情報を渡した、媒介物を更新した、責任や品質基準が問題になった、などの出来事条件を置く必要がありそう
- AIあり/なしのアウトプット生成場面で共通して現れる目的形成、評価基準、修正判断、納得、責任などは、不変的構造の候補として扱えるかもしれない。ただし「一致したから不変」と断定するのではなく、AIによって表れ方がどう変わるかまで見る必要がありそう
繰り返し浮かぶモチーフ
- 言語化 — ほぼすべてのスレッドに顔を出す。認知負荷の移行、ノーマンモデルの再解釈、言語化支援のデザイン、いずれも「言語化」を軸に回っている
- 外部化 — 言語化より広いモチーフとして浮上している。プロンプトだけでなく、README、skill、デザインシステム、サンプル、評価チェックリストなどを通じて、暗黙の判断基準を AI が扱える形へ出す動き
- 委譲 — AI に何を任せ、何を人間が判断し続けるのかという問い。行動契約、委譲範囲、人間の介入点、承認・撤回 UI などに広がる
- ギャップの変質 — 縮まるのではなく性質が変わる、という見方が繰り返し現れる
- 従来との対比 — 「従来は〜だったが、AI時代は〜」という思考パターンが頻出する。これ自体が研究の方法論的な特徴かもしれない
- 深い層 vs 表層(二層モデル) — ノーマンの構造不変性、ペースレイヤリング、「作る側 vs 使う側」の対構造など、「変わらない層と変わる層」という枠組みが異なる文脈で繰り返し現れる
- 判断基準 — 人間側に残るものとして繰り返し出てきている。何を良いとするか、何をブランドらしいとするか、何を採用しないかを定義し、外部化し、AI 出力を評価するための軸
- 意義のその先 — 「〜が整理できる」「〜を説明できる」だけでなく、その整理が誰のどんな場面で何を可能にするのか、どんな判断を助けるのかまで言う必要がある
- 背景 / 問い / 意義の分離 — 具体例や実務上の試行錯誤を背景として置き、その背景からどんな問いが立ち上がり、誰にどんな意味があるのかを分けて書く必要がある
- 設計対象の拡張 — UI/UX 設計で考える対象が、画面上の操作性だけでなく、AI への指示、権限、確認、実行過程の見え方、結果の妥当性、既存アプリとの関係などへ広がっているのではないか、という問題意識が研究の起点として浮上している
- 概念的貢献と実務的含意の分離 — 意義の本体は概念的な見取り図や記述語彙に置き、デザイナーや組織への具体的な意味は含意として控えめに扱う必要がありそう
- 広い入口 / 狭い観察断面 — 背景は AI 介在型実践全体として広く置きつつ、実際の研究対象は観察・記録・分析できる断面に絞る必要がある
- 変化し続ける対象への足場づくり — AI そのものではなく、AI が入った実践の中で繰り返し現れる構造や観点を探すことで、変化に耐える研究の形をつくる必要がありそう
- 上位の問い / 観察可能な手がかり — 「AI をどう研究するか」という大きな問いを保ちつつ、媒介物・ワークフロー・判断評価の現れ方を手がかりにすることで、研究が抽象化しすぎるのを避けられそう
- ズレと修復の場面 — AI の出力に違和感が出る、修正が必要になる、判断基準が表に出る場面に、暗黙知や評価基準を観察する手がかりが集中していそう
- 文脈条件としての対象者属性 — 職能差を主題にしすぎない一方で、誰のどの実践における判断なのかを記録しないと、「人間の判断」として粗く一般化してしまいそう
- 既存枠組みとの対応づけ — Park et al.、Shi et al.、Terry et al.、Doshi and Moore、Watkins et al. などを土台にし、インシデントを既存の分類・評価・alignment 枠組みにマッピングすることで、自分の研究の焦点を無理なく締められそう
- AIなし実践の補助参照 — AIを使わない制作実践は効率比較のための比較群ではなく、AI利用時に外部化される目的・制約・評価基準・暗黙知が、人間のみの制作ではどの工程・経験・身体化された判断・レビュー過程に埋め込まれていたのかを見る参照点として扱えそう