次回ゼミ用スライド構成案
作成日: 2026-05-12
位置づけ: 次回ゼミで、研究の現在地を堅苦しく発表するのではなく、生のつぶやきに近い形で話しながら伝えるためのスライド構成案。完成された研究計画を示すというより、「何に違和感を持ち、どこで困り、いま何を研究主題に置こうとしているのか」を共有するための構成。
全体方針
今回のスライドでは、最初から(全然中では扱って)「不変的構造」「クリティカル・インシデント法」「外部化」「媒介」などの研究語を前面に出しすぎない。
まずは、自分が実際に見ている変化として、AI がサービスやアプリの中に入り込んできていることを具体例で話す。Canva や Notion の AI 機能、Genspark や Claude のような AI を軸にしたサービス、Claude Code のような作業実行に近い AI、MCP や AI エージェントによって既存サービスのデータ取得・操作が可能になる流れなどを、背景として置く。
そのうえで、「今まで人間が UI を操作して目的を達成していた流れの中に、AI が入ってきている」という自分の見方を伝える。
次に、そこから「人間が考えることの内容やプロセス、人間とシステムとのインタラクションが変わるのではないか」という問いを出す。
さらに、それが本当ならサービス設計・体験設計・UI 設計の前提も変わるかもしれない、という話をする。ただし、ここで設計要件を断定しない。Generative UI、AI リーダブル、AI に操作されるサービス設計、メンタルモデルなどは、まだこれから定義や事例を見ていく必要があるものとして話す。
そのあとで、「でも AI の変化が速すぎて、今の前提を定義してもすぐ変わってしまうのではないか」という研究上の困難を出す。
最後に、だからこそ、AI 時代の設計要件をいきなり作るのではなく、人間と AI の関わりの中で比較的安定して現れる軸や構造を探ることを、いま研究主題に置こうとしている、と話す。
想定スライド構成
1. 表紙
タイトル案
AI がデジタルサービスに入ってきたとき、人間とシステムの関係はどう変わるのか
サブタイトル案
変化の速い AI を研究で扱うために、まず比較的変わりにくい構造を探りたい
話すこと
今日は完成した研究計画というより、今の問題意識をそのまま共有したい。
そもそも自分が何に引っかかっていて、なぜ「不変的な構造を探る」という方向に来たのかを話す。
見せ方
タイトルは問いの形にする。堅い研究題目にしすぎない。
2. そもそもの始まり
メインメッセージ
最近、デジタルサービスの中に AI がいろいろな形で入り込んできている。
話すこと
まず始まりとして、AI の急速な発達がある。
AI は、既存のサービスの中の機能として入ってきたり、AI を軸にしたサービスとして生まれたり、最近では MCP や AI エージェントによって、既存サービスの外側からデータを取ったり操作したりできるようになってきている。
ここではまだ研究の結論を言うのではなく、「自分が見ている現状」を話す。
スライドに置く要素
- 既存サービス内の AI 機能: Canva、Notion など
- AI を軸にしたサービス: Genspark、Claude、Claude Code など
- AI エージェント / MCP: freee、マネーフォワードのようなサービスとの接続可能性
- AI がデジタルサービスの中に介入してきている
見せ方
3つの入口として並べる。
- アプリの中に AI が入る
- AI 自体がサービスになる
- AI が既存サービスを外側から操作する
3. これまでのデジタルサービスの前提
メインメッセージ
これまでは、人間がアプリを開き、UI を操作して目的を達成する形が中心だった。
話すこと
これまでの多くのデジタルサービスでは、人間がサービスやアプリを開いて、画面を見て、ボタン、フォーム、メニュー、一覧、詳細画面などを操作して目的を達成していた。
人間とシステムの関係は、かなり画面 UI を中心に組み立てられていた。
スライドに置く要素
人間 → 画面 UI → アプリ / サービス → 目的達成
見せ方
シンプルな流れ図にする。
ここは次のスライドで AI が入る前の基準点として見せる。
4. でも、その流れの中に AI が入ってきた
メインメッセージ
今まで人間が UI を通じて目的を達成していた流れの中に、AI が介入し始めている。
話すこと
今は、人間が直接全部の画面操作をするのではなく、AI に頼む、AI が情報を取りに行く、AI が生成する、AI がサービスのデータを扱う、という流れが出てきている。
これは単に便利機能が増えたというより、人間がデジタルサービスで目的を達成するまでのプロセスの中に、AI が入ってきたということではないか。
スライドに置く要素
従来:
人間 → UI → アプリ → 目的達成
AI 介入後:
人間 → AI → アプリ / データ / ツール → 結果
人間 → 結果を確認・修正・採用判断
見せ方
従来の図に AI を差し込む。
画面 UI が消えるのではなく、AI 経由の経路が増えているように見せる。
5. そこで気になっていること
メインメッセージ
人間が目的を達成するまでに考えることの内容やプロセスが変わるのではないか。
話すこと
ここが自分の一番の問題意識に近い。
AI が入ることで、人間が目的の動作や目的を達成するまでに考えることの内容が変わるのではないか。
プロセスも変わるのではないか。
人間とシステム、あるいは人間とアプリとのインタラクションも変わるのではないか。
従来は「どの画面で何を操作するか」が大きかった。
でも AI が入ると、「AI に何をどう頼むか」「どこまで任せるか」「結果をどう確認するか」「AI が使ったデータや過程をどこまで信頼するか」を考える必要が出てくるかもしれない。
スライドに置く要素
- 何をどう頼むか
- どこまで任せるか
- 何を確認するか
- どう信頼するか
- どこで修正するか
- 誰が責任を持つか
見せ方
中央に「目的達成までに人間が考えること」と置き、周囲に問いを散らす。
まだ「委譲」「外部化」などの圧縮語は出しすぎない。
6. そうなると、設計側も変わるかもしれない
メインメッセージ
サービス設計・体験設計・UI 設計で考える前提も見直す必要が出てくるのではないか。
話すこと
もし人間とデジタルサービスの関係が変わるなら、設計する側も変わる可能性がある。
今までの UI のユーザビリティ、画面の分かりやすさ、操作のしやすさだけではなく、AI が読む、AI が操作する、人間が AI に任せる、人間が AI の結果を確認する、ということも設計対象になるかもしれない。
ここでは、まだ全部を定義できているわけではない。
Generative UI、AI リーダブル、AI に読まれやすい設計、AI に操作されることを前提にした設計、人間側のメンタルモデルなど、先行研究や実務上の提言をもっと見ていく必要がある。
スライドに置く要素
- Generative UI
- AI リーダブル / AI に読まれやすい設計
- AI に操作されることを前提にした権限・ログ・承認
- 人間側のメンタルモデル
- 従来のユーザビリティだけでは捉えきれない可能性
見せ方
「まだ仮の観点」として見せる。
断定ではなく、「こういうことが設計対象に入ってくるのでは」という形にする。
7. でも、ここで困る
メインメッセージ
AI の変化が速すぎて、今の前提を定義してもすぐ変わってしまうかもしれない。
話すこと
ここで研究として困る。
今この瞬間なら、「AI が入るとこういう設計前提が必要です」と言えるかもしれない。
でも、AI サービスはどんどん出てくる。モデル性能も上がる。MCP のような技術も出てくる。AI エージェントができることも変わる。
その日その日で、AI によってできることのレベル、内容、規模が変わっている。
だから、今の具体的な AI 機能や UI を前提にして設計要件を定義しても、研究している間に前提が変わるのではないか、という不安がある。
スライドに置く要素
- 新しい AI サービスが出る
- モデル性能が上がる
- MCP / AI エージェントの連携が広がる
- できることの内容・規模が変わる
- 今の設計前提がすぐ古くなるかもしれない
見せ方
「見たいこと」と「難しさ」を対比する。
見たいこと: AI によるサービス体験・設計前提の変化
難しさ: AI 自体の前提が速く変わる
8. だから、一段手前に戻りたい
メインメッセージ
AI 時代の設計要件をすぐ定義する前に、人間と AI の関わりの中で比較的変わりにくい構造を探りたい。
話すこと
ここで今の研究主題につながる。
AI によって設計の前提が変わるかもしれない。
でも、その変化自体が速すぎる。
だからまず、人間と AI のインタラクションや関わり方の中で、何か比較的変わりにくい軸や構造がないかを探る必要があるのではないか。
これは、未来永劫変わらない原理を見つけたいという意味ではない。
AI の機能やサービス名が変わっても、人間が AI と関わるときに繰り返し出てきそうな観察の足場を探したい、ということ。
スライドに置く要素
- 設計要件をいきなり定義するのではない
- その前に、観察の足場を探る
- 比較的安定して現れる構造
- 変化の速い AI を研究で扱うための整理
見せ方
「AI 時代の設計要件を作る」から「それを考えるための観察軸を探る」へ、一段下げる図にする。
9. たとえば、変わりにくそうなもの
メインメッセージ
目的、判断、評価、違和感、修正、納得、責任のようなものは、AI があってもなくても現れるかもしれない。
話すこと
たとえば、何かアウトプットを作るとき、人間は目的を持つ。
何を良いとするか判断する。
途中で違和感を持つ。
修正する。
最終的に納得するかどうかを判断する。
責任や品質について考える。
これは、AI を使っても使わなくても出てくるかもしれない。
ただし、AI を使う場合には、それがプロンプト、指示、追加情報、確認、修正依頼として外に出やすくなるかもしれない。
スライドに置く要素
AI なし:
- 頭の中
- 手作業
- 経験
- 暗黙知
- レビュー過程
AI あり:
- プロンプト
- 指示
- 出力確認
- 修正依頼
- 追加情報
- ログ / 承認
共通しそうなもの:
- 目的
- 判断
- 評価
- 違和感
- 修正
- 納得
- 責任
見せ方
AI なし / AI ありを左右に置き、中央に共通しそうな上位概念を置く。
10. どう探るか
メインメッセージ
AI あり / なしのアウトプット生成プロセスを、クリティカル・インシデント法で比較してみたい。
話すこと
方法として今考えているのは、クリティカル・インシデント法。
AI で何かアウトプットを生成したプロセスと、AI を使わずに人間の手で何かアウトプットを生成したプロセスの両方を見る。
それぞれについて、どこで重要な判断や迷い、違和感、修正、納得が起きたのかをインタビューやアンケートで聞く。
そして、それぞれに出てきたクリティカルなインシデントを見比べる。
共通して出てくるものがあれば、それを比較的安定した構造の候補として見る。
さらに、AI を使う場合には、それがどう外部に表れたのかを見る。
スライドに置く要素
- AI を使ったアウトプット生成
- AI を使わないアウトプット生成
- それぞれのクリティカルな出来事を集める
- 共通する出来事 / 違う表れ方を見る
- 不変的な概念・構造の候補を探る
見せ方
2つのプロセスを並べ、その下に「比較する」と置く。
11. 比較で見たいこと
メインメッセージ
共通しているかどうかだけでなく、AI が入ることで表れ方がどう変わるかを見たい。
話すこと
ここは少し注意して話す。
AI あり / なしで共通して出てきたからといって、それをすぐ「不変」と断定するわけではない。
共通しているものは、まずは不変的な構造の候補として見る。
むしろ大事なのは、AI がないときには頭の中や手作業や経験に埋め込まれていた判断や評価が、AI を使うときにはプロンプトや指示や修正依頼として外に出るかもしれない、というところ。
そこを見ることで、AI によって新しく生じたものと、AI によって表に出やすくなった人間側の構造を分けて考えたい。
スライドに置く要素
見ること:
- 共通する上位概念
- AI ありでの表れ方
- AI なしでの埋め込まれ方
- 外部化・再配置されるもの
見ないこと:
- AI の方が速いか
- AI の方が良いか
- ツールごとの性能比較
見せ方
「比較の目的」を明確にするスライド。
効率比較ではないことをはっきり出す。
12. 現時点での研究の言い方
メインメッセージ
変化の速い AI を前提に、人間と AI の関わりの中で比較的安定して現れる観察軸を探る研究。
話すこと
ここで一度、研究としての言い方にまとめる。
ただし、論文のように固く言いすぎない。
スライドに置く文章案
AI の急速な発達によって、デジタルサービスの中に AI が介入し、人間が UI を操作して目的を達成するという従来の関係が変わりつつあるかもしれない。
しかし、AI の技術やサービス形態は変化が速く、現在の機能や事例を前提に設計要件を定義しても、すぐに前提が変わってしまう可能性がある。
そこで本研究では、AI あり / なしのアウトプット生成プロセスにおけるクリティカルな出来事を比較し、人間と AI の関わりの中で比較的安定して現れる概念・構造を探る。
見せ方
文章は3行程度に絞る。
長い説明は口頭で補う。
13. まだ詰めたいところ
メインメッセージ
まだ、具体例・先行研究・調査設計は詰める必要がある。
話すこと
最後に、今の時点で自分がまだ詰めたいところを正直に出す。
これは完成した研究計画ではなく、次のステップに進むための共有である。
スライドに置く要素
- AI がサービス設計・UI 設計の前提を変える具体例をもっと集める
- Generative UI、AI リーダブル、AI に操作される設計などの先行研究や提言を見る
- クリティカル・インシデント法をどう設計するか詰める
- AI あり / なしで何を比較するのかを明確にする
- 対象にするアウトプット生成プロセスを絞る
見せ方
「まだ決まっていないこと」として見せる。
弱さではなく、相談したいポイントとして置く。
14. ゼミで相談したいこと
メインメッセージ
この研究の置き方と、次に絞るべき観察対象について相談したい。
話すこと
最後は質問で終える。
堅い発表ではないので、相談したいことをそのまま出す。
スライドに置く問い
- この研究を「AI 時代の設計要件を作る研究」ではなく、「その前に観察軸を探る研究」と置くのは妥当か
- AI あり / なしのアウトプット生成プロセスを比較する方法は、この主題に合っているか
- 対象にするアウトプット生成は、文章、スライド、UI、コードのどこから始めるのがよさそうか
- 「不変的な構造」という言い方は強すぎるか。別の言い方がよいか
- 先行研究として、どの領域から見ていくべきか
見せ方
問いを5つ並べる。
ここは議論を促すためのスライド。
スライド全体の流れ
- 今回話したいこと
- AI がデジタルサービスに入り込んできている
- 従来は人間が UI を操作して目的を達成していた
- その流れの中に AI が入ってきた
- 人間が考えることやプロセスが変わるのではないか
- 設計側の前提も変わるかもしれない
- しかし AI の変化が速すぎる
- だから一段手前に戻りたい
- 目的・判断・評価・修正などは比較的残るかもしれない
- AI あり / なしのプロセスを CIT で比較したい
- 共通性だけでなく、表れ方の変化を見る
- 現時点での研究の言い方
- まだ詰めたいところ
- 相談したいこと
この構成で避けたいこと
- 最初から「委譲条件」「外部化」「媒介物」などの圧縮語で説明しすぎる
- AI 時代の UI/UX 設計原則をもう作れるように見せる
- AI あり / なしの比較を、効率や品質の比較のように見せる
- 「不変的構造」を、絶対に変わらない普遍原理のように言い切る
- 具体例を省略して、抽象的な研究目的だけで話す
話し方のトーン
今回のゼミでは、次のような言い方が合いそうである。
まだ整理しきれていない部分もあるんですけど、そもそもの始まりとして、AI がデジタルサービスの中にかなり入り込んできている感覚があります。
今までは、人間がアプリを開いて、UI を操作して、目的を達成していたと思うんですけど、そこに AI が入ってくると、人間が考えることや、目的達成までのプロセス自体が変わるのではないかと思っています。
そうなると、UI や体験設計で考えるべき前提も変わるかもしれないんですが、AI の変化が速すぎて、今の時点でその前提を定義してもすぐ変わってしまうのではないかという難しさがあります。
なので、いきなり AI 時代の設計要件を作るというより、その前に、人間と AI の関わりの中で比較的変わりにくく現れる構造や観察軸を探ることを研究の主題に置けないかと考えています。
方法としては、AI を使ったアウトプット生成と、AI を使わないアウトプット生成の両方を見て、そこで出てくるクリティカルな出来事を比較することで、共通して現れるものや、AI によって表れ方が変わるものを見たいと思っています。
構成上の判断
この構成では、研究の主題を最後まで隠すわけではないが、最初に出しすぎない。最初に出すのは「AI がデジタルサービスの中に入ってきている」という具体的な現状である。
その後、「人間が目的を達成するまでのプロセスに AI が介入する」という見方を置き、「人間が考えることやインタラクションが変わるのではないか」と広げる。
そこから、「設計側も変わるかもしれない」と話すが、ここでは研究対象を広げすぎないようにする。Generative UI や AI リーダブルなどは背景・今後調べるべき具体例として扱う。
研究主題は、「その変化を考えるために、まず比較的安定した観察軸を探る」という位置に置く。
最後に方法として、クリティカル・インシデント法と AI あり / なし比較を出す。これにより、思いつきではなく、次に実際にできる調査の形があることを示す。