設計者目線から見た研究方針の再整理
作成日: 2026-05-11
位置づけ: これまで「変化の速い AI を研究対象として扱うための観察軸を探る」と表現していた研究方針を、設計者目線の問題意識から組み直すためのメモ。現時点の考えを整理したものであり、最終的な研究計画として確定したものではない。
1. まず整理したいこと
これまでの整理では、「変化の速い AI を研究として扱うための観察軸を探る」という言い方が前面に出ていた。しかし、この表現だけだと、研究の出発点が「AI をどう研究するか」という方法論的な問いに見えすぎる。
現在の感覚では、研究の起点はそこだけではない。むしろ、もともとの問題意識は、AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などによって、UI/UX 設計で考えるべき対象や、アプリ・サービス体験のあり方が変わってきているのではないかという設計者目線の問いにある。
したがって、研究の順序は次のように置いた方が自然に見える。
- AI によって、アプリやサービスの使われ方・作られ方・接続され方が変わりつつある
- その結果、UI/UX 設計で考えるべき対象も、画面上の操作性だけではなくなっている可能性がある
- しかし、その変化を研究で扱おうとすると、AI 自体の変化が速すぎて、そもそも AI をどのような判断軸で扱えばよいのかが見えにくい
- そのため、AI が関わる体験設計を考えるための足場として、人間と AI の間にある不変的な概念・構造を探る必要があるのではないか
この整理では、「不変的な概念・構造を探る」ことは、特定の AI 機能や UI を避けるための消極的な方針ではない。AI によって UI/UX 設計対象が変化する可能性を研究で扱うために、まず AI という変化の速い対象をどう捉えるかという判断軸をつくる必要がある、という位置づけである。
2. 背景として見えている変化
従来、多くのアプリや SaaS では、人間がアプリを開き、画面を見て、ボタン、メニュー、フォーム、検索、一覧、詳細画面などを操作しながら目的を達成していた。UI/UX 設計では、その画面構造、情報設計、操作の分かりやすさ、エラーの防止、フィードバック、タスク完了までの流れなどが重要な対象になっていた。
しかし、AI がアプリやサービスに入り込むと、この関係が変わる可能性がある。たとえば、既存アプリの中に AI 機能が組み込まれ、ユーザーが一部の操作や判断補助を AI に任せる場面が増えている。また、ChatGPT や Claude のような AI ツールが、特定アプリの外側から文章作成、調査、要約、設計、実装などを担う場面も増えている。
さらに、AI エージェントや MCP のような仕組みが広がると、人間がアプリを直接操作しなくても、AI に指示することで複数のサービスやデータにアクセスし、情報取得や書き込みを行うような形も考えられる。会計、経費、顧客管理、ドキュメント管理、プロジェクト管理などの SaaS は、人間が画面を開いて操作する対象であると同時に、AI エージェントが呼び出すツール群にもなりうる。
また、AI によって簡単な管理画面や業務ツールを自作するハードルが下がると、既存 SaaS を使うのか、自作するのか、AI に都度生成させるのかという選択も変わってくる可能性がある。これは「SaaS の死」のような言説とも接続しうるが、本研究ではその言説自体を検証するというより、アプリやサービス体験の前提が変わりつつあるかもしれない背景として捉える。
3. UI/UX 設計で考える対象の拡張
このような変化が進むと、UI/UX 設計で考える対象は、画面上の操作性や分かりやすさだけでは足りなくなる可能性がある。ただし、ここで「従来の UI/UX では足りない」と強く断定するよりも、設計者が考えるべき対象が広がっているかもしれない、という問いとして置く方がよさそうである。
現時点で考えられる拡張対象には、次のようなものがある。
- AI に何を指示すればよいのか
- AI にどの範囲の権限を与えてよいのか
- AI が実行する前後で、人間はどこを確認すべきなのか
- AI がどのデータやツールを使って、どのような過程で実行したのかをどう見せるのか
- AI の結果が妥当かどうかを、どのように判断・検証できるようにするのか
- 既存アプリの UI と、AI エージェント経由の操作をどう共存させるのか
- 画面上の操作ログだけでなく、AI の判断過程やツール呼び出しをどう扱うのか
- ユーザーが自分の目的、制約、優先順位を AI に伝えやすくするにはどうすればよいのか
これらは、現時点では研究の結論ではなく、観察したい問題群である。AI が介入することで、体験設計の対象が「画面」から「画面・AI・ツール・権限・確認・実行過程・既存システムの関係」へ広がるのかもしれない、という見立てがある。
4. 研究上の困難
このテーマを難しくしているのは、AI の変化が非常に速いことである。モデル性能、AI ツールの UI、エージェント機能、アプリ側の AI 機能、外部サービス連携の仕組みは短期間で変化する。数年前には難しかった Web サイトのデザインや実装も、現在では AI によってそれらしいものが出力できるようになっている。今は人間が確認しなければならないことも、将来は AI 側でかなり処理されるようになるかもしれない。
ここでの困難は、特定の AI 機能、UI、ツール、サービス連携を対象にすること自体が間違いだということではない。むしろ、それらの具体例を通じて変化は観察される。ただし、AI 自体が速く変わるため、「AI が関わる体験設計」を研究で扱うには、個別事例をどう読み解くのか、どの観点なら継続して参照できるのかという判断軸が必要になる。
この困難に対して、現在は、人間と AI の間に不変的に現れる概念・構造を探るという方針が出てきている。ここでいう「不変的」は、特定の機能や UI の変化を超えて、AI を介した目的達成の中で繰り返し問われる可能性のある、人間の認知、判断、行動、体験設計上の関係構造を指している。
5. 研究目的の書き直し案
現時点では、本研究の目的は次のように書けるかもしれない。
本研究は、AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などの発展により、従来はアプリやサービスの UI を通じて行われていたデジタル上の目的達成や体験設計の前提が変わりつつある可能性に着目する。特に、UI/UX 設計で考えるべき対象が、画面上の操作性だけでなく、AI への指示、権限、確認、実行過程の見え方、結果の妥当性、既存アプリとの関係などへ広がっているのではないかという問題意識を出発点とする。一方で、AI 自体の変化が速いため、この変化をどのような判断軸で研究として扱えばよいのかが見えにくい。そこで本研究では、AI が関わる体験設計を考えるための足場として、人間と AI の間に不変的に現れる概念・構造を探索する。
より短く言うなら、次のようにも言える。
AI によって UI/UX 設計の対象が画面上の操作性を超えて広がりつつある可能性を背景に、変化の速い AI を研究で扱うための判断軸として、人間と AI の間に不変的に現れる概念・構造を探る研究。
6. 観察窓の候補
この方針では、「どの場面を見るのか」を決めることが重要になる。AI 時代の UI/UX 設計対象の変化をすべて扱うことは難しいため、観察窓を絞る必要がある。
候補としては、次のような場面が考えられる。
AI 機能が組み込まれた既存アプリを使う場面
- 例: アプリ内の AI 補助、文章生成、入力補完、分析補助、要約機能など
- 見えそうなこと: 既存 UI と AI 機能の関係、AI が補助する範囲、ユーザーの確認・修正のあり方
AI エージェントが複数のサービスやデータに接続して処理する場面
- 例: MCP 経由で SaaS やデータベースにアクセスし、情報取得や書き込みを行う
- 見えそうなこと: アプリを開かない操作、権限、ログ、承認、既存アプリ UI との関係
AI ツールによって小さな業務ツールや管理画面を自作する場面
- 例: 管理画面、社内ツール、簡易 Web アプリ、レポート生成ツールなどを AI で作る
- 見えそうなこと: SaaS を使う/作る境界の変化、設計者ではない人の設計行為、生成物の評価
制作・開発・研究・設計のプロセスで AI が生成や実行を担う場面
- 例: スライド生成、UI 生成、コード実装支援、研究整理、ドキュメント生成
- 見えそうなこと: 人間が何を決め、AI に何を任せ、どこで確認・修正するのか
現時点では、どれか一つに即決するより、まず 3〜5 件程度の事例やインシデントを試しに記録し、「設計対象の拡張」がどの場面で具体的に見えるかを確認する進め方がよさそうである。
7. クリティカル・インシデント法の位置づけ
これまで、クリティカル・インシデント法は、判断・評価・違和感・修復が露出する出来事を拾う方法として考えられていた。今回の再整理を踏まえると、その位置づけは少し変わる。
CIT は、研究の中心テーマではなく、AI によって UI/UX 設計対象が拡張していることが具体的に表れる出来事を拾うための方法として使えるかもしれない。たとえば、AI に権限を与えるか迷った場面、AI がどのように実行したのか分からず確認が必要になった場面、既存アプリの UI と AI 経由の操作が食い違った場面、AI の出力を信頼してよいか判断した場面などは、設計対象の変化が表に出るインシデントとして扱える可能性がある。
したがって、CIT の対象は「AI を使ったアウトプット生成場面」一般ではなく、設計上の問いが具体的に露出した出来事に絞った方がよさそうである。ここで、判断・委譲・評価・修復・外部化・介入といった語彙は、最初から研究の主語にするのではなく、インシデントを読み解くときに出てくる候補語彙として扱う。
8. 先行研究とのつなぎ直し
Park et al. の生成 AI 評価方法論、Shi et al. の Human-GenAI Interaction taxonomy、Terry et al. の interactive alignment、Doshi and Moore の Human-AI Task Tensor などは、引き続き重要な先行研究である。ただし、今回の再整理では、それらとの接続の仕方も少し変わる。
以前は、「変化の速い AI を研究対象として扱うための観察軸」という観点から、これらの先行研究と近さや違いを考えていた。今後は、AI によって UI/UX 設計対象が拡張している可能性を考えるうえで、既存の分類・評価・相互作用枠組みがどこまで使えるのかを確認するための土台として使う方が自然に見える。
たとえば、Shi et al. の taxonomy は Human-GenAI Interaction の全体像を整理するうえで重要である。一方で、AI エージェントが既存 SaaS の外側から操作する場面や、AI の実行過程・権限・確認をどう体験設計に組み込むかといった問いは、taxonomy を実際の設計問題に接続して考える必要があるかもしれない。
Park et al. は、生成 AI の非決定性が HCI 評価を難しくすることを示している。この研究は、AI を固定的な対象として評価しにくいという背景を支える。ただし、本研究ではそれをラボ評価の方法論だけでなく、AI によって UI/UX 設計対象が変わる可能性をどう観察するかという問題に接続して考える。
9. 現時点で避けたい言い方
今回の再整理を踏まえると、次のような言い方は避けた方がよさそうである。
- 「変化の速い AI を研究する方法をつくることが主目的である」
- 「判断・委譲・評価・修復・外部化・介入を最初から研究の中心軸として置く」
- 「従来の UI/UX や HCI では足りない」と断定する
- 「AI と人間の不変的構造が存在する」と強く言い切る
- 「MCP や AI エージェントそのものを研究対象にする」と狭く言い切る
代わりに、次のような言い方が現時点では自然に見える。
- AI によって UI/UX 設計で考える対象が広がりつつある可能性に着目する
- その変化を研究で扱うために、短期的な技術変化に依存しすぎない観察上の足場を探る
- 人間と AI の間で比較的変わりにくく現れる概念・構造を、事例やインシデントを通じて探索する
- 既存の HCI / HAI / GenAI evaluation の枠組みを土台にしつつ、AI エージェント的・AI 介在的な体験設計の問題を捉え直す
10. 次に決めるべきこと
次に必要なのは、観察窓を仮決めすることである。研究の背景は広く置けるが、実際にデータを集めるには、どの場面で AI による UI/UX 設計対象の拡張を見るのかを決める必要がある。
現時点では、次の問いを使って候補を比較するとよさそうである。
- その場面では、画面中心の操作から AI 介在型の目的達成への変化が見えるか
- AI への指示、権限、確認、実行過程、結果の妥当性、既存アプリとの関係が具体的に問題になるか
- 自分が実際に事例やインシデントを集められるか
- 先行研究の taxonomy や評価枠組みと接続できるか
- 修士研究として扱える範囲に収まるか
この比較を行ったうえで、最初の 3〜5 件の事例・インシデントを記録し、そこから研究の対象範囲、方法、成果物の形をもう一段階絞るのが現実的に見える。
11. スライド構成案
目的: 研究の結論を断定的に並べるのではなく、背景から問題意識、研究上の困難、現在の方針までを一つの文脈として伝える。読み手が「なぜこの研究をするのか」「なぜ不変的な概念・構造を探ろうとしているのか」を具体的に想像できる構成にする。
全体の流れ
今回のスライドは、「変化の速い AI をどう研究するか」から始めるのではなく、「AI によって UI/UX 設計で考える対象が変わりつつあるのではないか」という設計者目線の問題意識から始める。そのうえで、その変化を研究で扱うときに AI の変化の速さが困難として現れ、だからこそ人間と AI の間に比較的変わりにくく現れる概念・構造を探る必要がある、という順序で展開する。
1. 表紙
タイトル案
AI によって UI/UX 設計の対象はどう変わるのか
サブタイトル案
変化の速い AI を前提に、人間と AI の間にある比較的安定した観察軸を探る
このスライドで伝えること
研究テーマそのものを一言で置く。ここではまだ「結論」を言い切らず、問いとして提示する。
2. 研究の出発点
メインメッセージ
出発点は、AI 研究方法論ではなく、設計者目線での違和感にある。
内容
AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などが出てきたことで、アプリやサービスの使われ方・作られ方・接続され方が変わりつつある。そこで、UI/UX 設計で考えるべき対象も、従来の画面上の操作性だけではなくなっているのではないか、という問題意識がある。
見せ方
左に「従来の関心: 画面・導線・操作性」、右に「今気になっていること: AI への指示・権限・確認・実行過程・結果の妥当性・既存アプリとの関係」を置く。
3. これまでのアプリ利用の前提
メインメッセージ
従来は、人間がアプリを開き、画面を操作して目的を達成する関係が中心だった。
内容
多くの SaaS やアプリでは、人間がログインし、画面を見て、一覧・詳細・フォーム・ボタン・検索などを操作しながら目的を達成してきた。UI/UX 設計では、情報設計、操作の分かりやすさ、エラー防止、フィードバック、タスク完了までの導線などが重要だった。
見せ方
「人間 → 画面 UI → アプリ内データ・処理」というシンプルな流れ図にする。
4. AI が入ることで変わりつつある関係
メインメッセージ
AI が入ると、人間が直接アプリを操作するだけではない目的達成の形が出てくる。
内容
既存アプリの中に AI 機能が入る。アプリの外側にある AI ツールが、文章作成、調査、要約、設計、実装を担う。AI エージェントや MCP によって、複数のサービスやデータに AI が接続し、情報取得や書き込みを行う可能性も出てくる。
見せ方
前スライドの図を拡張し、「人間 → AI → 複数のアプリ・データ・ツール」という関係を重ねる。従来の画面 UI が消えるのではなく、AI 経由の経路が追加されるように見せる。
5. 具体例で想像する
メインメッセージ
体験設計の対象は、画面そのものから、AI を介した目的達成の流れへ広がるかもしれない。
内容
たとえば、会計 SaaS や業務ツールを開かずに、AI エージェントに「今月の支出をまとめて」「この条件でデータを取得して」「必要なら登録して」と頼む場面を考える。ここでは、画面が分かりやすいかだけでなく、AI にどこまで権限を与えるか、実行前に確認するか、何を根拠に結果を信頼するか、既存アプリ側の UI とどう関係するかが問題になる。
見せ方
1つの短いシナリオとして描く。細かい機能説明ではなく、「人間が何を考えそうか」「どこに不安や確認が生じそうか」を想像できるようにする。
6. UI/UX 設計で考える対象の拡張
メインメッセージ
設計対象は、画面上の操作性だけでなく、AI との関係を含むものに広がる可能性がある。
内容
現時点で考えられる論点として、AI への指示、権限、確認、実行過程の見え方、結果の妥当性、既存アプリとの関係、ログ、承認、ユーザーの目的や制約の伝え方などがある。これらは結論ではなく、これから観察したい問題群である。
見せ方
中央に「AI 介在型の体験設計」を置き、周囲に「指示」「権限」「確認」「過程の見え方」「妥当性」「既存アプリとの関係」を配置する。
7. ただし、研究として扱うのが難しい
メインメッセージ
この変化を追いたいが、AI の前提そのものが速く変わってしまう。
内容
AI のモデル性能、ツールの UI、エージェント機能、アプリ側の AI 機能、サービス連携の仕組みは短期間で変化する。いま重要に見える UI パターンや使い方も、研究している間に別の形になるかもしれない。特定ツールの機能や現在の UI だけを対象にすると、研究の足場が不安定になりやすい。
見せ方
「見たいこと: UI/UX 設計対象の変化」と「難しさ: AI の前提が速く変わる」を対比する。
8. そこで考えている方針
メインメッセージ
短期的な機能変化ではなく、人間と AI の間で比較的変わりにくく現れる概念・構造を探りたい。
内容
ここでいう「不変的」は、未来にも絶対に変わらないという意味ではない。モデルや UI が変わっても、AI に何を任せるのか、何を確認するのか、どこまで権限を与えるのか、どう結果を信頼するのか、といった問いは形を変えながら残る可能性がある。まずはそのような観察上の足場を探りたい。
見せ方
上段に「変わりやすいもの: モデル・UI・ツール・連携方式」、下段に「比較的残りそうな問い: 任せる範囲・確認・権限・信頼・既存システムとの関係」を置く。
9. 研究の現時点での言い方
メインメッセージ
AI によって UI/UX 設計の対象が広がる可能性を、変化の速い技術に依存しすぎず捉えるための研究。
内容
本研究は、AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などの発展により、従来はアプリやサービスの UI を通じて行われていたデジタル上の目的達成や体験設計の前提が変わりつつある可能性に着目する。その変化を研究として扱うための足場として、人間と AI の間で比較的変わりにくく現れる概念・構造を探索する。
見せ方
文章は長くしすぎず、研究説明文を1つのまとまったステートメントとして表示する。
10. 観察窓の候補
メインメッセージ
次に必要なのは、この変化をどの場面から見るかを仮決めすること。
内容
候補は、AI 機能が組み込まれた既存アプリ、AI エージェントが複数サービスに接続する場面、AI ツールで小さな業務ツールを自作する場面、制作・開発・研究・設計プロセスで AI が生成や実行を担う場面などである。それぞれ見えそうなことが違うため、最初は少数の事例やインシデントを試しに記録するのがよさそうである。
見せ方
4つのカードで「場面」「見えそうなこと」を短く並べる。
11. 方法はまだ固定しすぎない
メインメッセージ
CIT や既存 taxonomy は、研究の主題ではなく、観察を助ける道具として使う。
内容
クリティカル・インシデント法は、AI によって設計対象が広がっていることが具体的に表れる出来事を拾う方法として使えるかもしれない。また、Shi et al. や Park et al. などの先行研究は、AI と人間の相互作用や評価の枠組みを考える土台になる。ただし、最初から「判断・委譲・評価・修復」を主軸として固定するのではなく、観察を通じてどの語彙が必要になるかを見ていく。
見せ方
「研究の主題」と「観察を助ける道具」を分ける。主題は「UI/UX 設計対象の変化」、道具は「CIT」「既存 taxonomy」「事例記述」。
12. 次に考えたいこと
メインメッセージ
背景は見えてきたので、次は観察窓を絞る。
内容
次に決めるべきことは、どの場面で AI による UI/UX 設計対象の拡張を見るのかである。その場面で、画面中心の操作から AI 介在型の目的達成への変化が見えるか、指示・権限・確認・実行過程・結果の妥当性が具体的に問題になるか、実際に事例を集められるかを検討する。
見せ方
問いとして終える。「どの場面を見るべきか?」を大きく置き、その下に評価観点を並べる。
構成上の注意
このスライドでは、各ページで強い結論を言い切るよりも、次のページに自然につながる問いを残す。たとえば、「AI が入ると UI/UX は変わる」と断定するのではなく、「変わりつつあるのではないか」「そうだとすると何を設計対象として見ればよいのか」という形で進める。
また、「判断・委譲・評価・修復・外部化・介入」といった語彙は、序盤から前面に出しすぎない。まずは設計者目線の問題意識を共有し、その後、研究方法や観察語彙として必要になったところで控えめに出す方がよい。
12. スライド構成案(再検討版)
位置づけ: 前案では「UI/UX 設計対象の拡張」が研究主題のように見えすぎていた。再検討版では、研究主題を「人間と AI の間に比較的安定して現れる概念・構造を探ること」に置き、UI/UX 設計対象の変化は、その主題に至る背景・動機として扱う。
全体の考え方
今回のスライドでは、最初から「判断・委譲・評価・修復」などの分析語彙を並べるのではなく、まず、AI によってアプリやサービス体験、UI/UX 設計の前提が変わりつつあるかもしれないという問題意識を共有する。
ただし、研究の中心は、個別の UI 変化や操作変化を追うことではない。AI の機能、UI、ツール、エージェントの形は短期間で変わるため、表層の変化だけを追うと研究の足場が不安定になる。そこで、AI を介して人間が目的を達成しようとするときに繰り返し現れる、目的の持ち方、AI への期待、任せる範囲の判断、確認、信頼、納得、責任感、行動の組み立て方といった、より上位の認知的・心理的・行動的構造を探る研究として見せる。
つまり、スライド全体の流れは次のようにする。
- AI によってアプリやサービス体験の前提が変わりつつある
- その変化は UI/UX 設計にも関係している
- しかし、具体的な AI 機能や UI は変化が速く、そこだけを追うと研究が不安定になる
- そこで、表層の変化の奥にある、人間と AI の間の比較的安定した概念・構造を探りたい
- その構造は、認知・心理・行動のレベルで現れる可能性がある
- 今後は、それをどの場面で、どのような出来事から観察するかを決める
1. 表紙
タイトル案
人間と AI の間にある安定した観察軸を探る
サブタイトル案
変化の速い AI を前提に、人間と AI の間にある安定した観察軸を探る
このスライドで伝えること
研究の主題を「UI/UX 設計の変化そのもの」ではなく、「その変化を考えるために、人間と AI の間にある比較的安定した構造を探ること」として提示する。
2. まず背景にある変化
メインメッセージ
AI によって、アプリやサービスを使う・作る・つなぐ前提が変わりつつある。
内容
AI 機能が既存アプリに組み込まれ、AI ツールがアプリの外側で作業を担い、AI エージェントや MCP のような仕組みによって複数のサービスやデータに接続する可能性が出てきている。さらに、AI によって小さな業務ツールや管理画面を自作するハードルも下がっている。
見せ方
「アプリ内 AI」「外部 AI ツール」「AI エージェント / MCP」「自作ツール化」の4つを、現在起きている変化の例として並べる。ここではまだ研究主題を言い切らず、背景を具体的に想像できるようにする。
3. 従来の体験設計の中心
メインメッセージ
従来は、人間が画面を操作し、アプリの中で目的を達成する関係が中心だった。
内容
人間はアプリを開き、画面を見て、入力し、検索し、確認し、保存し、処理を完了する。UI/UX 設計では、情報設計、導線、操作の分かりやすさ、エラー防止、フィードバックなどが重要だった。
見せ方
「人間 → 画面 UI → アプリ内処理 → 目的達成」というシンプルな流れ図を置く。ここは、次のスライドで変化を見せるための基準点にする。
4. AI が入ったときの関係の変化
メインメッセージ
AI が入ると、人間は画面を直接操作するだけでなく、AI を介して目的を達成するようになる。
内容
AI に指示し、AI がアプリやデータやツールにアクセスし、結果を返す。人間はすべての操作を直接行うのではなく、目的を伝え、実行を任せ、結果を確認し、必要に応じて修正するような関係になるかもしれない。
見せ方
前スライドの図に「AI」を挟み、「人間 → AI → 複数のアプリ・データ・ツール → 結果」という経路を重ねる。画面が消えるのではなく、画面中心ではない経路が増えるように見せる。
5. ここで UI/UX 設計の問いが広がる
メインメッセージ
設計で考える対象は、画面上の操作性だけでなく、AI を介した目的達成の条件にも広がる可能性がある。
内容
AI に何を指示すればよいのか。どの範囲まで任せてよいのか。どの権限を与えるのか。実行前後で何を確認すべきか。AI がどのような過程で実行したのかをどう見せるのか。結果をどのように信頼し、妥当だと判断するのか。既存アプリの UI と AI 経由の操作をどう共存させるのか。
見せ方
中央に「AI を介した目的達成」を置き、周囲に「指示」「権限」「確認」「過程」「信頼」「既存アプリとの関係」を置く。ここは背景から問題意識へ移る橋にする。
6. しかし、ここだけを直接追うと難しい
メインメッセージ
具体的な AI 機能や UI は変化が速く、研究中にも前提が変わる可能性がある。
内容
モデル性能は短期間で上がり、AI ツールの UI も変わり、エージェント機能や連携方式も増えていく。今は重要に見える操作や課題が、数か月後には別の形になっているかもしれない。つまり、現在の UI パターンやツール仕様だけを追うと、AI 時代の体験設計を考える足場としては弱くなる可能性がある。
見せ方
「変わりやすいもの」として、モデル性能、UI、ツール、連携方式、アプリ形態を横に流す。表層が動き続けているイメージを出す。
7. そこで研究主題を一段深く置く
メインメッセージ
見たいのは、個別の操作変化だけでなく、その奥にある人間と AI の関係構造である。
内容
人間の操作がどう変わるかは重要な観察対象ではある。しかし、それ自体が最終的に探りたいものではない。より見たいのは、人間が AI をどう理解し、何を期待し、どこまで任せ、どこで不安になり、何を確認し、どう信頼し、どう納得し、どこに責任を感じるのかという、認知・心理・行動の構造である。
見せ方
3層図にする。
- 表層: AI 機能、UI、MCP、エージェント、SaaS 連携
- 観察される実践: 頼む、任せる、確認する、修正する、止める、信頼する
- 探りたい構造: 目的形成、期待、メンタルモデル、委任感覚、確認欲求、信頼、責任、納得
8. 研究の主題
メインメッセージ
本研究は、人間と AI の間に比較的安定して現れる概念・構造を探る研究である。
内容
ここでいう「比較的安定」は、未来にも絶対に変わらないという意味ではない。AI の機能や UI が変わっても、人間が AI を介して目的を達成しようとするときに、目的の持ち方、期待、任せる範囲、確認、信頼、納得、責任の置き方などが繰り返し現れる可能性がある。そうした構造を探索することで、AI 時代の UI/UX や体験設計を考えるための足場をつくりたい。
見せ方
大きなステートメントとして置く。ここで初めて研究主題を明確に言う。
9. なぜ UI/UX と関係するのか
メインメッセージ
人間と AI の関係構造を捉えることは、AI 時代の体験設計を考えるための前提になる。
内容
たとえば、ユーザーがどこで不安になるのかが分からなければ、どこに確認や承認を置くべきかを考えにくい。何を根拠に信頼するのかが分からなければ、実行過程やログの見せ方を設計しにくい。どこまで任せてよいと感じるのかが分からなければ、AI の権限設計や操作の粒度を考えにくい。
見せ方
「構造を捉える → 設計で考える問いが見える」という流れを示す。認知・心理・行動の構造が、確認 UI、権限設計、ログ表示、承認フローなどの設計論点に接続することを見せる。
10. 観察窓として考えられる場面
メインメッセージ
この構造は、AI が目的達成の流れに入る場面から観察できるかもしれない。
内容
候補として、AI 機能が組み込まれた既存アプリ、AI エージェントが複数サービスに接続する場面、AI ツールで小さな業務ツールを自作する場面、制作・開発・研究・設計プロセスで AI が生成や実行を担う場面などがある。
ただし、どの場面を見るかはまだ決めきらない。見るべきなのは、その場面で「人間が AI をどう理解し、任せ、確認し、信頼し、納得するか」が具体的に現れるかどうかである。
見せ方
4つの候補をカードで並べるが、カードの見出しは「ツール種別」ではなく、「どんな構造が見えそうか」に寄せる。
11. クリティカル・インシデントの位置づけ
メインメッセージ
インシデントは、構造が表に出る場面を拾うための方法である。
内容
すべての AI 利用場面を均等に見るのではなく、違和感、不安、確認、判断、修正、やり直し、承認、責任の迷いなどが生じた出来事を見る。そうした場面では、普段は見えにくい期待、メンタルモデル、信頼、委任感覚、納得の条件が表に出る可能性がある。
見せ方
「普段の利用」では見えにくいものが、「つまずき・確認・修正・迷い」の場面で表に出る、という図にする。
12. 先行研究との接続
メインメッセージ
既存研究は、構造を探るための土台として使う。
内容
Human-GenAI Interaction の taxonomy、生成 AI 評価研究、Human-AI Task Tensor、Interactive AI Alignment などは、人間と AI の相互作用を考えるための重要な土台になる。ただし、本研究ではそれらを避けて独自性を出すのではなく、実際のインシデントや事例を通じて、人間と AI の間に現れる認知・心理・行動の構造をどう記述できるかを検討する。
見せ方
「既存研究の枠組み」と「実際のインシデント」を左右に置き、その間で往復しながら観察軸を整理する図にする。
13. 現時点での研究説明
メインメッセージ
AI 時代の UI/UX 設計を考えるために、人間と AI の間にある比較的安定した構造を探索する。
説明文案
本研究は、AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などの発展により、アプリやサービス体験、UI/UX 設計の前提が変わりつつある可能性を背景に、人間が AI を介して目的を達成しようとするときに繰り返し現れる認知的・心理的・行動的な構造を探索する。AI の機能や UI が急速に変化するなかで、特定ツールの仕様に依存しすぎず、AI 時代の体験設計を考えるための観察上の足場を整理することを目指す。
見せ方
このスライドは、発表中盤以降のまとめとして置く。表紙では問いとして出し、ここで少し研究説明らしい文にする。
14. 次に決めること
メインメッセージ
次は、どの場面でこの構造を観察するかを決める。
内容
候補場面を比較し、どこで目的形成、期待、任せる範囲、確認、信頼、納得、責任といった構造が見えやすいかを検討する。最初は少数の事例やインシデントを記録し、どの語彙や観察軸が実際に必要になるかを確認する。
見せ方
最後は結論ではなく、次の検討課題として終える。「どの場面なら、人間と AI の関係構造が見えるか?」を大きく置く。
再検討版でのポイント
この構成では、UI/UX 設計対象の変化は研究の主題ではなく、研究が立ち上がる背景として扱う。主題は、人間と AI の間で比較的安定して現れる認知・心理・行動の構造を探ることに置く。
また、操作や UI の変化は軽視しないが、それは表層または観察される実践として扱う。最終的に探りたいものは、その奥にある目的形成、期待、メンタルモデル、委任感覚、確認欲求、信頼、責任、納得といった上位構造である。
したがって、スライドでは「AI によって UI/UX が変わる」という話から入るが、途中で「では、その変化をそのまま追うのではなく、奥にある人間と AI の関係構造を見る」という転回を明確に入れる必要がある。
13. スライド構成案(再々検討版)
位置づけ: 既存スライドは、1枚あたりの情報密度が低く、背景例や抽象語がそのまま並んでしまったため、初見の読み手に「なぜこの研究になるのか」が伝わりにくかった。再々検討版では、教授に思考の流れを説明することを想定し、1枚ごとに「背景」「そこから出る問題」「自分がどう考えているか」がつながるようにする。
全体方針
このスライドは、研究の結論を発表する資料ではなく、研究の軸を相談するための資料としてつくる。したがって、各スライドは「私はこう断定します」ではなく、「こういう背景があり、ここに問題があるように見えていて、いまはこう考えています」という流れにする。
ページ数は増やしすぎない。1枚1メッセージは守るが、メッセージだけで終わらせず、そのページ内で具体例・問い・考え方まで読める密度にする。特に、MCP、SaaS、自作ツール化などは研究対象として断定的に扱うのではなく、AI がデジタル上の目的達成に入り込んできている背景例として扱う。
1. 表紙
タイトル案
変化の速い AI を、UI/UX 設計の研究でどう扱うか
サブタイトル案
人間と AI の間にある不変的な概念・構造を探る
このスライドで伝えること
この研究は「AI ツールの使い方」や「特定 UI の評価」ではなく、AI によってアプリ・サービス体験の前提が変わるなかで、それを研究として扱うための軸を探ろうとしていることを示す。
見せ方
タイトルを大きく置き、下に「背景: AI によるアプリ体験の変化」「主題: 人間と AI の間の不変的構造」の2語を小さく添える。
2. 研究の出発点: AI によってアプリ体験の前提が変わりつつある
この1枚で言いたいこと
AI は単体のチャットツールとしてだけでなく、既存アプリ、外部ツール、エージェント、サービス連携として入り込み、人間がデジタル上で目的を達成する経路を変えつつある。
内容
従来、多くのデジタルサービスでは、人間がアプリを開き、画面を見て、ボタンやフォームを操作し、目的の処理を進めていた。しかし現在は、既存アプリに AI 機能が組み込まれたり、アプリの外側にある AI ツールが文章作成・調査・設計・実装を担ったり、AI エージェントが複数サービスやデータへ接続するような方向が見えている。
ここで重要なのは、MCP や特定 SaaS の事例そのものではない。それらは、「人間が画面を直接操作してアプリ内で完結する」という前提が揺らぎ始めていることを想像するための背景例である。
見せ方
1枚の中に、左側に「従来: 人間 → 画面 UI → アプリ」、右側に「現在: 人間 → AI → アプリ / データ / ツール」という関係図を置く。下に「アプリを使う体験の経路が増えている」と短く書く。
3. そこから出てくる設計者目線の問い
この1枚で言いたいこと
AI が目的達成の流れに入ると、UI/UX 設計で考える対象は、画面上の操作性だけでなく、AI を介した行為全体へ広がる可能性がある。
内容
この変化が進むと、設計者が考えるべきことは「画面が分かりやすいか」「操作しやすいか」だけではなくなるかもしれない。たとえば、ユーザーは AI に何をどう伝えればよいのか。AI にどの範囲まで任せてよいのか。どの権限を与えるのか。AI が実行した内容をどこで確認するのか。結果が妥当かどうかをどう判断するのか。既存アプリの画面と AI 経由の操作はどう関係するのか。
つまり、設計対象が「画面上の操作」から、「人間が AI を介してデジタル上の目的を達成するプロセス」へ広がっている可能性がある。
見せ方
中央に「AI を介した目的達成」を置き、周囲に「指示」「権限」「確認」「実行過程」「妥当性」「既存アプリとの関係」を配置する。ただし、単語だけで終わらせず、各項目に短い問いを添える。
4. もともと探りたかったこと
この1枚で言いたいこと
もともとの研究関心は、AI が入ったときに、人間がデジタル上で目的を達成する際の思考内容・判断・行動プロセスがどう変わるのかを探ることにある。
内容
研究の関心は、AI の性能や機能そのものではない。AI が介入することで、人間がシステムをどう理解し、何を目的として持ち、何を AI に頼み、どこで確認し、どこで不安になり、どのように納得して目的達成へ向かうのかが変わるのではないか、という点にある。
この関心は、UI/UX 設計ともつながっている。なぜなら、体験設計は単に画面を整えることではなく、人間が目的を達成するまでの理解、判断、行動を支えることでもあるからである。AI がその流れに入るなら、人間側の思考や判断の流れを捉え直す必要があるかもしれない。
見せ方
「AI の性能を見る」ではなく「AI が入った目的達成プロセスを見る」という対比を置く。右側に「理解する / 頼む / 任せる / 確認する / 信頼する / 納得する」という流れを置く。
5. 研究上の困難: AI の変化が速すぎて、何を軸に見ればよいかが定まりにくい
この1枚で言いたいこと
問題は、特定の AI 機能や UI を対象にすることが間違いなのではなく、AI 自体の変化が速いため、具体例をどの判断軸で読み解けばよいのかが見えにくいことである。
内容
AI のモデル性能、UI、ツール形態、エージェント機能、アプリ連携の方法は短期間で変化する。2年前には難しかったデザインや実装が、今ではある程度できるようになっているように、AI によってできる範囲は急速に広がっている。
そのため、AI が関わる体験設計を研究したいと思っても、「今の機能ではこうだった」「このツールではこうだった」という具体例を、そのまま研究の中心に置くだけでは不安定になる。必要なのは、具体例を避けることではなく、変化する具体例をどの観点で見ればよいのかという判断軸である。
見せ方
上段に「AI は変わる: 性能 / UI / 連携 / できる範囲」、下段に「困ること: 具体例をどう読めばよいかが定まりにくい」を置く。最後に強調文として「避けたいのは具体例ではなく、軸なしで具体例を追うこと」と入れる。
6. そこで置きたい研究主題
この1枚で言いたいこと
変化の速い AI を扱うための判断軸として、人間と AI の間に不変的に現れる概念・構造を探りたい。
内容
ここでいう不変的な概念・構造とは、未来にも完全に変わらない原理という意味ではない。AI の機能や UI が変わっても、人間が AI を介して目的を達成しようとするときに繰り返し現れそうなものを指している。
たとえば、人間は AI をどのような相手・道具・実行主体として理解するのか。何を任せてよいと感じるのか。どこで確認したくなるのか。何が見えると信頼できるのか。結果にどう納得するのか。責任や判断をどこに置くのか。こうした認知・心理・行動の構造を探ることが、AI が関わる UI/UX 設計を研究するための足場になるのではないかと考えている。
見せ方
大きく「不変的な概念・構造 = AI を扱うための判断軸」と置く。その下に、認知、心理、行動の3区分で例を並べる。
7. 操作の変化ではなく、その奥のプロセスを見る
この1枚で言いたいこと
観察したいのは、単に「操作がどう変わったか」ではなく、人間が AI を介して目的達成へ向かうときの思考・判断・行動プロセスである。
内容
表面上は、画面操作が減る、自然言語で頼む、AI が裏側で処理する、結果を確認する、といった変化として見えるかもしれない。しかし、それだけを見ると、ツールや UI の変化に引っ張られやすい。
より見たいのは、その背後で人間が何をしているのかである。目的をどう言語化しているのか。AI の能力をどう見積もっているのか。どこまで任せるかをどう決めているのか。どの情報があれば安心して進めるのか。結果を見て、何を根拠に受け入れたり修正したりするのか。
見せ方
3層図にする。
- 表層: UI、ツール、エージェント、サービス連携
- 実践: 指示する、任せる、確認する、修正する、採用する
- 探りたい構造: 目的形成、能力の見積もり、信頼、納得、責任、判断
このページは情報密度を高め、研究の焦点をはっきりさせる。
8. どのように観察するか
この1枚で言いたいこと
人間と AI の関係構造は、AIあり/なしのアウトプット生成場面における重大な出来事を比較することで見えてくる可能性がある。
内容
すべての AI 利用場面を均等に見るのではなく、人間の思考や判断が表に出る場面を拾う。さらに、AI を使ってアウトプットを生み出す場面だけでなく、人間自身でアウトプットを生み出す場面にも目を向ける。両者に共通して現れる重大事項を比較することで、AI の有無にかかわらず残りやすい概念・構造の候補を見られる可能性がある。
ここでクリティカル・インシデント法は、研究の主題ではなく、構造が表に出る出来事を拾うための方法として位置づける。CIT を使うこと自体が目的なのではなく、AIあり/なしの制作・生成場面において、普段は見えにくい認知・心理・行動の構造が露出する場面を記録するために使う。
見せ方
「AIありの重大場面」と「人間のみの重大場面」を左右に置き、その共通点・差異から不変的構造の候補を探る図にする。
8-1. なぜクリティカル・インシデント法を使うのか
この1枚で言いたいこと
AI 利用の一般的な感想ではなく、AIあり/なしのアウトプット生成で重要だった出来事を集め、共通する上位概念を不変的構造の候補として見たい。
目的
クリティカル・インシデント法を使う理由は、「AI を使ってどうだったか」という一般的な印象を集めるためではない。アウトプットを生み出す過程で、目的、評価基準、迷い、修正、納得、責任などが具体的に表に出る出来事を拾うためである。
AI を使った場面では、AI に任せようとしたが不安になった、出力を見て違和感を持った、どこまで確認すべきか迷った、結果を採用してよいか判断できなかった、追加で条件や文脈を説明し直した、といった出来事を拾う。人間のみの場面では、目的を決め直した、良し悪しの基準に迷った、修正の方向を変えた、完成として納得した、責任を持って提出した、といった出来事を拾う。
両方を比較し、共通して現れる目的形成、評価、修正判断、納得、責任、暗黙知の扱いなどを、不変的構造の候補として検討する。ただし、「一致したから不変」と断定するのではなく、共通する上位概念と、AI によって表れ方が変わる部分の両方を見る。
見せ方
「AIありのインシデント」「人間のみのインシデント」「共通する上位概念」「AIによって表れ方が変わる部分」の4ブロックで見せる。
8-2. どのような出来事をインシデントとして扱うか
この1枚で言いたいこと
対象にするのは、AI を使った場面すべてではなく、AIあり/なしのアウトプット生成において、人間の判断や構造が露出した出来事である。
インシデント候補
- AI に何を頼むか、どこまで任せるかを迷った場面
- AI に与える情報、条件、制約、権限を決めた場面
- AI の実行過程や参照先が分からず、確認したくなった場面
- AI の出力に対して「何か違う」と感じた場面
- 人間自身で作っているときに、目的や方向性を決め直した場面
- 人間自身で作っているときに、良し悪しの基準や完成の判断に迷った場面
- AIあり/なしを問わず、修正、採用、不採用、責任、納得が問題になった場面
ここで見たいこと
これらの出来事を通じて、単に「AI が成功した / 失敗した」や「人間の方がよい / AI の方がよい」を見るのではなく、人間側で何が判断され、何が迷いになり、何が評価基準になり、何が納得や責任の条件になったのかを記録する。
見せ方
左に「AIありで拾う出来事」、中央に「人間のみで拾う出来事」、右に「比較して読みたい構造」を置く。
8-3. どのように記録するか
この1枚で言いたいこと
インシデントは、AIあり/なしのどちらでも、出来事の前後関係と、その中で人間が何を考え、何を基準に判断し、どう修正・納得したのかをセットで記録する。
記録項目の案
場面
どのアプリ・AI・作業文脈で起きたのか。目的
人間は何を達成しようとしていたのか。依頼・進め方
AIありの場合は何を頼み、どの情報・制約・権限・文脈を渡したのか。人間のみの場合は、どのように着手し、どの順序で考えたり作ったりしたのか。出力・途中成果
AI の出力、または人間自身の途中成果として何が生まれたのか。何が見え、何が不足していたのか。人間の反応
どこで迷い、違和感、不安、確認、信頼、納得、修正判断が生じたのか。その後の行動
追加説明、修正、再依頼、採用、不採用、確認、承認など、何をしたのか。読み取りたい構造
目的形成、評価基準、修正判断、納得、責任、暗黙知、信頼、委任感覚のどれに関係しそうか。
見せ方
AIあり/なしで同じフォーマットを使うことを示す。「出来事」だけでなく「そのとき人間が何を考え、何を基準に判断したか」を必ず含める。
8-4. どのように分析するか
この1枚で言いたいこと
AIあり/なしの複数インシデントを比べ、共通する上位概念と、AIによって表れ方が変わる部分を整理する。
分析の進め方
まず、各インシデントを個別に読み、どの場面で人間の認知・心理・行動が表に出たのかを整理する。次に、AIありのインシデント同士、人間のみのインシデント同士を比較し、さらに両者を横断して、似たような目的形成、評価基準、修正判断、納得、責任の置き方が繰り返し現れるかを見る。
そのうえで、先行研究の枠組みとも照らし合わせる。たとえば Human-GenAI Interaction の分類、生成 AI 評価研究、Interactive AI Alignment などを参照し、既存の語彙で説明できる部分と、追加で整理したい部分を分ける。
分析で見たいこと
- AIあり/なしの双方で、目的形成や評価基準はどのように現れるか
- AIありでは、人間のみの制作で暗黙だった基準がどのように外に出るか
- 結果を信頼・納得する条件は、AIあり/なしで何が共通し、何が違うか
- 人間はどこで責任や承認を意識するか
- 共通する上位概念を、不変的構造の候補としてどこまで言えるか
見せ方
「AIありの記述」→「人間のみの記述」→「共通概念と差異の比較」→「不変的構造の候補化」→「先行研究との対応づけ」という5段階で示す。
8-5. CIT を使ったときの成果物の形
この1枚で言いたいこと
この方法で目指す成果は、AI 利用の成功・失敗事例集でも、AIあり/なしの優劣比較でもなく、人間と AI の関係を観察するための軸や記述語彙である。
想定される成果物
インシデント記録テンプレート
AI が関わる目的達成の出来事を、同じ形式で記述するためのもの。インシデントのパターン整理
AIあり/なしの双方で、どのような目的形成、評価、修正、納得、責任の問題が繰り返し現れるか。観察軸・概念図
共通して現れる上位概念を、不変的構造の候補として研究・設計の両方で参照できる形にしたもの。先行研究との対応表
既存の HAI / HCI / GenAI evaluation の枠組みで説明できる部分と、補助的に見たい部分を整理したもの。
見せ方
最終成果のイメージとして、「AIあり/なしを記録する」「共通点と差異を比べる」「不変的構造の候補として整理する」「設計・研究に戻す」という流れを示す。
9. 研究の現時点での説明
この1枚で言いたいこと
本研究は、AI によって UI/UX 設計の対象が広がる可能性を背景に、変化の速い AI を扱うための判断軸として、人間と AI の間にある不変的な概念・構造を探る研究である。
説明文案
本研究は、AI 機能、AI ツール、AI エージェント、MCP などの発展により、アプリやサービスを通じたデジタル上の目的達成や UI/UX 設計の前提が変わりつつある可能性に着目する。AI が関わることで、設計者が考えるべき対象は、画面上の操作性だけでなく、AI への指示、権限、確認、実行過程、結果の妥当性、既存アプリとの関係などへ広がるかもしれない。一方で、AI 自体の変化が速いため、この変化をどのような判断軸で研究として扱えばよいのかが見えにくい。そこで本研究では、人間が AI を介して目的を達成しようとするときに繰り返し現れる認知・心理・行動の構造を探索し、AI 時代の UI/UX 設計を考えるための観察上の足場を整理することを目指す。
見せ方
ここは文章量を少し増やしてよい。発表の中盤〜終盤に、ここまでの流れを1枚で回収するスライドとして使う。
10. 次に相談したいこと
この1枚で言いたいこと
次に決めたいのは、どの場面を観察窓にすれば、人間と AI の不変的な概念・構造が見えやすいかである。
内容
候補としては、AI 機能が入った既存アプリ、AI エージェントや MCP によるサービス連携、AI ツールによる小さな業務ツールの自作、制作・開発・研究・設計の支援場面などがある。ただし、候補をツール種別として並べるのではなく、それぞれの場面でどのような認知・心理・行動の構造が見えそうかを基準に比較したい。
相談したいのは、どの場面で、目的形成、AI への期待、任せる範囲、確認、信頼、納得、責任といった構造が最も具体的に現れそうかである。まずは少数の事例やインシデントを記録し、どの語彙や観察軸が実際に必要になるかを確認したい。
見せ方
「観察窓の候補」ではなく「相談したい判断基準」として終える。候補場面を3〜4個並べ、その下に「何が見えるかで選ぶ」と書く。
再々検討版で避けたいこと
- 背景例をそのまま研究主題のように見せない
- 「MCP」「SaaS」「AI エージェント」を説明しすぎない
- 1枚1メッセージにしすぎて、文脈や理由が削れないようにする
- 「特定 UI やツールを対象にするのは違う」という否定形にしない
- 「不変的構造」を抽象語だけで置かず、認知・心理・行動プロセスの具体に接続する
再々検討版の中心文
AI によって、アプリやサービスを通じた目的達成のあり方、そして UI/UX 設計で考えるべき対象が変わりつつある可能性がある。しかし、AI 自体の変化が速いため、その変化をどの判断軸で研究として扱えばよいのかが見えにくい。そこで本研究では、人間が AI を介して目的を達成しようとするときに繰り返し現れる認知・心理・行動の構造を探索し、AI 時代の UI/UX 設計を考えるための観察上の足場を整理する。